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ナノテク発イノベーションに向けて 会期:2007年2月21日(水)〜23日(木)時間:10:00〜17:00 会場:東京ビックサイト 東5ホール(ブースNo.C-69)

イベントレポート

「ナノテク発イノベーション」で挑んだ「nano tech 2007」



最近は通信やコンピューティング、材料、バイオといった分野だけでなく、化粧品やサプリメントなどにまで活かされている、ナノテク。10億分の1メートルという微小な世界で生みだされた、様々な高機能性や付加価値を訴求する製品が、身近な存在として市場に出回るなど、いまやナノテクと製品ニーズのマッチングは実に幅広い領域で図られています。

そんな明日の技術の支えとなる最先端のナノテクと出会え、未来技術の発掘の場としても世界中から注目されている技術展示が、2月21〜23日の3日間、東京ビッグサイトで開催されました。世界最大級のナノテク総合展、「nano tech 2007」。会場では、約4万8千5百(主催者発表)人、400もの参加企業・公的機関・学校などが、それぞれ創意工夫を凝らした研究開発の成果を披露。ナノテクを利用した最新デバイスや材料をはじめ、超微細加工技術、評価用機器など、様々な展示です。

東芝は「ナノテク発イノベーション」をスローガンに、ナノテクにも「Leading Innovation」で挑み続け、ナノテク戦略を提案しています。
東芝のナノテク戦略は、最先端ナノ材料技術を部品、セット製品及びシステムの差異化に生かし、脱コモディティ化商品の創出を実現するために積極的な研究開発活動に取り組み、アプリケーションの実現に向け進めています。さらにナノテク技術を駆使した未来社会を目指し、安心で安全な社会、暮らしの支えのベースとなる最先端技術を「デジタルプロダクツ」「社会インフラ」「電子デバイス・機能材料」の3領域で10コンテンツの独自の研究開発成果や試作品などを紹介します。

「デジタルプロダクツ」領域〜 ここまでモデル化されたDMFC


東芝ブースの最前列で「ナノテク発イノベーション」を具現化していたのが、DMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)。「デジタルプロダクツ」領域での出展に「実用化に手応えを感じさせる展示を心掛けました。燃料電池の完成度にも自信があります」(担当者)とのこと。実際、多くの来場者が足を止め、展示に見入ったり、ガイダンスを熱心に聞くなど、反響も上々のようです。


今回は、制御機構やポンプ類を使用しない特長を持ち、小型化に有利で持ち運びに便利なパッシブ型を展示。従来技術では使用できる燃料に制限があったものを、電極内の触媒を数ナノレベルまで微細化して高密度に配置する技術など、東芝独自のナノテクを多数投入し、高濃度のメタノール燃料の使用を可能にしています。2004年に発表し2006年度版ギネスブックにも登録された世界最小燃料電池は、横22×縦56mmの親指サイズで100mWの出力を実現。内蔵タンクに2mLの燃料が入り、「小型オーディオプレーヤであれば最大約20時間の駆動が可能」(担当者)とのことです。


この燃料電池を実装した試作品として、ブルートゥースヘッドセットとデジタルオーディオプレーヤーを展示。「ヘッドセットはオリジナルですが、プレーヤーは市販のgigabeat V30Tにスタンドを付け、そこに燃料電池とタンクを搭載しました。市販品の約2倍、14時間の連続稼働を実現しています。どこかに置いて視聴する際の補助はもちろん、携帯時に邪魔にならないようDMFCを組み込むデザインにも気を配りました」(担当者)。
※ヘッドセット写真(ヘッドホンタイプ)とプレーヤー写真
さらに、近未来イメージとして、地デジ対応モバイルビューワーと耳かけタイプのブルートゥースヘッドセットもラインナップ。「機能面だけでなく、身に着けた時の雰囲気をわかりやすくして提案することも大切ですね。今回、ブースでの来場者のみなさんの反応を間近で見て痛感しました」(担当者)。


「技術向上以外にも実用化に向けた取り組みはあるのか」という来場者からの質問に対し、「試作品それぞれの燃料カートリッジの注ぎ口を統一しています。イメージだけじゃありませんよ」と胸を張って答える担当者の姿が印象的です。ユニバーサルデザイン面もおさえられていた、このDMFCの展示。「メタノールの流通インフラの整備にも注力している」(担当者)というコメントもあり、実用化に向けた動きをさらに加速化させて普及を目指す東芝の姿勢が垣間見える、力のこもった展示です。

「社会インフラ」領域〜発電所まで手掛ける東芝のナノ技術力


社会の基盤を支える重要な部分においても、東芝は新たなナノテクの確立によって安心・安全に暮らせる社会を目指しています。その取り組みを「社会インフラ」領域の5コンテンツの出展でアピールします。
まず、ナノテクのエネルギー関連への応用技術として、レーザピーニングとナノコーティングが展示されています。


レーザピーニングは、金属材料の表面100nmをナノ秒レーザパルスでアブレーションし、3ギガパスカルの高圧で材料を強化する技術で、表面に圧縮の残留応力を発生させ、構造物のひび割れ(応力腐食割れ)を予防するもの。
すでに全国の原子力発電所10基でレーザピーニング処理が施されており、高い評価を受けています。ひび割れを予防することによって原子炉の寿命が伸びれば、運用コストの大幅な抑止ができるはず。「目立たない領域ですが、信頼性を高める努力は厭わない」(担当者)と力強いコメントを寄せています。
この実績から、米国での原子炉への技術適用の計画も進められており、東芝独自のナノテクとメカトロを融合した「レーザーピーニング施工ロボットを制作中」(担当者)と、さらなる社会貢献の実現を目指します。
原子炉で適用されたステンレス鋼やニッケル基合金のほか、「航空機用のアルミニウム合金やチタン合金、低合金鋼など、種々の金属の表面特性改善効果も確認されています」(担当者)。今後は航空機や自動車部品、橋梁、金型などの強度・信頼性の向上など、他分野への応用を計画しています。


また、ナノコーティングは次世代技術とも言える電子ビ−ム物理蒸着法(EB−PVD)により、ナノレベルで材料の組織・構造を制御するもの。材料を分子やクラスターまで分解して蒸着し、金属からセラミックスまで幅広く適用可能な技術に高めています。
基材運動によりセグメント(柱状)化、ナノポア導入、傾斜組成、多層化、複合化など多様な組織構造で1000nm以上の厚膜を100nm/h以上の高速で成膜を実現。特に、「独自のナノテクにより、ナノポアとナノギャップで高耐熱・低熱伝導のハフニア遮熱コ−ティングを行い、セグメント化と連続傾斜組成による熱応力緩和で耐熱性の著しい向上を実現しました」(担当者)ということが最大のポイントです。
HfO2にZrO2をコーティングする際、ナノレベルで柱状化させることにより、「1500度のガス燃焼にも耐えられるガスタービン静翼の製造に成功」(担当者)した東芝。「耐熱性に優れたナノコーティング技術を開発し、安全性を高めていきたい」(担当者)、今後は発電用・送変電用などの各種エネルギ−機器だけでなく、高耐熱・低熱伝導が求められる様々な金属パーツの高性能化・長寿命化も視野に入れ、さらなる技術向上を目指いきます。

「社会インフラ」領域〜最も軽くて強くてたわみにくい夢のセラミックス素材の誕生


エネルギー関連でもうひとつ、世界最高強度を実現した反応焼結SiCセラミックスを展示しています。
これは、セラミックスの微構造を100nmに制御する独自のナノテク技術で、世界最高の曲げ強度(※1)1,000MPaを実現したもの。構造材料の中で最も軽くて強く、たわみにくいセラミックスです。耐食性、耐熱性、耐摩耗性、高剛性、高熱伝導、低熱膨張、低比重といった優れた特性を持ち、さらに無気孔で焼結収縮が小さく、低コストで環境に優しいセラミックスを実現しています。
実際、「エネルギー機器の熱交換器部品や衛星用反射式望遠鏡のミラーなどに適用中です」(担当者)と、エネルギー・宇宙分野のキーマテリアルとして期待されています。現在、「半導体製造装置部品・スパッタリングターゲットとしての適用展開に注力しています」(担当者)というコメントにもあるように、差異化できるセラミックス材料で、市場の拡大を目指しています。
※1/2007年1月現在(東芝調べ)

「社会インフラ」領域〜21世紀発明賞奨励賞受賞の技術力でユビキタス社会に貢献!


エネルギー関連と並んで、近い将来にそうなるであろうユビキタス社会に向けたナノテク活用に向けた展示がありました。
全国放送を目前に控えた地上デジタル放送をはじめ、ラジオや携帯電話、GPS、無線LANなど、世の中には無線通信の電波があふれています。それらは、各々決められた周波数帯で送受信しているため、限られた周波数チャンネル内で効率よく送受信できないと、いずれ飽和してしまうのは避けられません。
東芝は、直流抵抗がゼロの超電導薄膜を応用してその解決策のひとつを提案します。不要電波を効率よく分離する高選択性周波数フィルタの開発です。「抵抗ゼロが作り出すシャープカット特性により、従来型の常電導フィルタではなしえなかった1チャンネルの信号を正確にとりだすことが可能になりました」(担当者)ということで、ブースには受信用の超電導フィルタユニットの試作品がデモ展示されていました。
上記試作品では物理蒸着法による超電導薄膜を用いておりましたが、現在は送信用フィルタの開発のため、耐電力性の高い通電容量の大きな超電導体が必要になっています。東芝はナノテクで構造を制御できる「TFA−MOD法」と呼ばれる製法で耐電力性の向上を目指しています。2006年に「21世紀発明奨励賞」を受賞したこの技術は、「常圧下で塗って焼くだけで原子レベルの配向組織が得られる」(担当者)製法で、「世界最高レベルの通電容量が得られました」(担当者)。
送信用フィルタへの適用を見据え「膜厚を増加させるなど、さらなる研究開発を進めていきます」(担当者)。通信の需要が高まる中、周波数チャンネルの有効活用に向け、東芝のナノテクにご期待ください。

「社会インフラ」領域〜究極の情報セキュリティ! これで盗聴は不可能に


ユビキタス絡みでは、量子暗号通信を支える単一光子デバイスの研究開発成果です。
これは、光の最小単位である光子ひとつずつに1ビットの暗号鍵情報を書き込み配信することで、従来の疑似単一光子光源からの複数光子同時発生による盗聴リスクをシャットアウトする画期的なものです。ナノサイズの量子ドットを包含するLED構造の単一光子光源デバイスを開発し、連続単一光子発信により通信速度向上と長距離鍵配信を可能にしています。
実際にブースでは25km分の光ケーブルでつないだPC間で映像データをやりとりするデモを、東芝の英国のケンブリッジ研究所のスタッフが実演。独自のシステム安定制御技術により、複雑な管理工程なしでも連続的に安定して動作させるレベルにあることを実証しました。
量子力学の原理に基づいて盗聴を必ず検出できる究極の暗号技術として、その実用化が待たれている量子暗号通信。その実用化に向けた研究開発を、東芝は一歩一歩、着実に進めていたことがよくわかる、印象的な展示です。

「電子デバイス・機能材料」領域〜22nm世代に向けた、ナノテクで超高性能LSIをリーディング・イノベーション!


“産業のコメ”とも言われる半導体や高機能を持ったマテリアルの創出に不可欠な最先端のナノテクを、独自の観点で活用した「電子デバイス・機能材料」領域の展示。4コンテンツの出展を紹介します。
まずは次世代トランジスタ技術。「22nmの次々世代のトランジスタ!」と多くの来場者が驚いていた、立体構造MOSトランジスタと不純物偏析ショットキートランジスタの登場です。
立体構造MOSトランジスタは、同一のシリコン基板上に平面と立体のトランジスタを混載。22nm世代向けのフィンFETを形成した300mm試作ウエハーで半導体のナノテク最先端を展示しています。
ゲート長15mm、フィン幅10mmの微細加工を実現できたからこその快挙! 今後は、「SWTプロセスで回路設計に制約が生じる課題を改善していく」(担当者)とのこと。恐らく2010年代には登場するだろうと目される22nm世代の超高性能LSIの実用化を促進する、この独自技術は「NAND型フラッシュメモリーや、LSIなどを使われているお客様の要求以上の答えとなるよう、これからも実用化を目指して研究開発していきます」(担当者)と、さらなるブラッシュアップを予定。


一方、不純物偏析ショットキートランジスタでは、第一原理計算に基づく原子レベルでのシミュレーションにより、新たなトランジスタの電極構造であるナノショットキー接合を提案。現状の技術では電極の微細化に限界があるところを、ナノレベルで不純物を制御する技術によって、低抵抗な電極の創出に成功しています。
携帯電話やデジタル家電、カーナビ、ロボットなどの高機能化に向けた超高性能LSIへの適用を進めており、すでに「22nm世代以降のみならず、32nm世代から視野に入っている」(担当者)というレベルにまできています。従来型トランジスタに比べ駆動電流が50%向上するなど良好な結果も得ており、今後、早い段階でさらに完成度を高め、実用化できるポテンシャルに高めていく計画です。

「電子デバイス・機能材料」領域〜独自のナノ分子蛍光体の創出で、照明の新たなスタイルを提案!


“産業のコメ”の次は、照明への応用が期待されているナノ分子蛍光体。
東芝は、白熱灯や蛍光灯の次を担う新たな照明として期待されている、白色LEDの特性向上にチャレンジし、新たな有機金属錯体の蛍光体の開発に成功。シャープな赤色発光を有するナノ分子蛍光体を活用し、新たな白色LEDの発光スペクトル創出を実現しています。
従来のものに比べ、発光強度や溶解性、耐久性の向上が図られ、特に人の肌色の再現性に優れているのが大きな特長。ブースでのデモで明らかに違う肌色の色調が表現されています。ここで活かされた蛍光体は、2006年にはフジサンケイ ビジネスアイ/第20回 独創性を拓く 先端技術大賞を受賞しています。
また、白色だけでなく、無色透明な蛍光体に紫外光をあてるとあらゆる色や明るさを自由自在に演出できる特長もあり、次世代の照明や真偽判定の素材としての実用化を目指しています。

「電子デバイス・機能材料」領域〜広範な領域での応用が期待されるキーマテリアル


グループ会社の東芝セラミックス(株)からは、高機能な多孔質材料が出展されています。
最先端素材として医療やバイオ、環境など様々な分野から注目を集める多孔質材料を創出する際、東芝セラミックスは得意のセラミックス活用に着目。ナノレベルで気孔率・気孔径・比重の制御を実現し、ナノ気孔とミクロン気孔の共存で様々な新機能を持たせ、水中で連続撹拌しても浮遊する高気孔率多孔質セラミックスの開発に成功しています。
他の多孔質材料に比べ、例えば細胞や微生物、酵素などを、早く高密度に培養することが可能に。この画期的な機能は、最先端医療の世界をはじめ次世代のエネルギー開発、半導体などのエレクトロニクス、断熱材・吸音材・電磁波吸収体などの環境分野…と、広範な領域で研究開発を加速させるキーマテリアルとして応用していきます。