イベントレポート
「地球温暖化の防止」をメインテーマに幅広い事例を紹介
東芝は、豊かな価値の創造と、地球との共生を新しい環境ビジョンとして、製品と事業プロセスで東芝グループの総合環境効率を2倍にすることを掲げています。その具体的な取り組みをご紹介する「第16回東芝グループ環境展」が、3月8〜9日の2日間、東芝本社ビルで開催されました。
当日は「地球温暖化の防止」をメインテーマに、環境調和型製品、地球温暖化防止、資源有効活用など3領域で109テーマの活動内容を展示。さらに特別講演会やセミナーなども開催されました。会場には2日間で過去最多となる約3,500名の来場者があり、東芝の環境への取り組みに対するみなさんの関心の高さをあらためて感じることができました。

「環境調和型製品」領域 〜 暮らしや社会のいろいろなところで活躍する東芝の環境調和型製品
東芝の環境調和型製品は、身近な家電製品からビルや工場などの大規模施設用製品まで幅広く、それらのもたらすCO2排出量の削減効果は年間で合計200万トンにも及ぶと試算されています。
洗濯乾燥機「エアコンサイクルドラムTW-2500VC」
まず身近な家電製品からご紹介しましょう。新発想によって電気と水の使用量を従来の約半分まで減らすことに成功した、洗濯乾燥機「エアコンサイクルドラムTW-2500VC」です。その発想とは、エアコンなどで使われているヒートポンプ方式を洗濯乾燥機に採用したことです。一般的な洗濯乾燥機で採用されているヒーター乾燥方式では、ヒーターで熱風を送り、回収した湿った熱風を冷却水で温度を下げて湿気を取り、またヒーターで熱風にして送るということを繰り返しています。ヒートポンプ方式にすれば、効率のよい除湿と加熱が行えるため乾燥性能がアップ。「その結果、電気の使用量が従来の約半分に抑えられるのでCO2排出量の削減効果が見込めます。冷却水も乾燥時は不要ですから、定格の洗濯から乾燥までの水の使用量も約半分まで減らすことが可能です」(担当者)。
植物由来プラスチック採用住宅照明器具
暮らしに欠かせない照明器具。ここでも東芝グループの環境調和型製品への取り組みが進んでいます。「照明器具のセードやカバーなどに使われるプラスチックは、石油系のものが一般的です。それを植物由来のプラスチックに置き換えることにより、プラスチック製造時の化石資源の使用量やCO2排出量を減らすことが可能になります」(担当者)。
今回、住宅用和風照明器具のセードのシート部分およびリモコン送信器の筐体部分に植物由来プラスチックを初めて採用。4月から発売予定です。
大規模施設用「スーパーフレックスモジュールチラー」
一方、大規模施設用の製品分野では画期的な製品も生まれています。第17回省エネ大賞の最高位である経済産業大臣賞を受賞した業務用冷凍・空調機器「スーパーフレックスモジュールチラー」です。「大型チラーでは業界初の高効率冷媒R410Aを採用し、また、真夏の日中など高い負荷がかかるときだけでなく負荷率40%〜70%の領域での運転効率も飛躍的に高めたことにより、業界トップクラスのエネルギー効率を実現。エネルギー消費量を大幅にダウンでき、従来の吸収冷温水機に比べCO2排出量を約60%削減可能にしました」(担当者)。
この製品のもうひとつの特徴は、ユニークなX-フレーム構造の採用です。これによってモジュールを連結して設置することが可能となり、省スペース性に優れています。
※東京電力(株)共同開発製品
小型ダイレクトメタノール形燃料電池
携帯電話やノートPCなどの高機能化にともない、使用中に電池が不足するという悩ましい問題が起こるようになりました。その解決策として期待されているのがモバイル機器用の燃料電池システムです。東芝では、小型ダイレクトメタノール形燃料電池(DMFC)を開発し、実用化に向けてプロジェクトを進めています。DMFCは小型の発電機です。従来のコンセントから充電する電池と異なり燃料のメタノールさえ持っていれば、いつでもどこでも連続してモバイル機器を利用することが可能になります。
「環境の視点から見ると、燃料電池は基本的に水素と酸素の化学反応による発電なので、酸性雨などを引き起こす窒素酸化物や硫黄酸化物を排出しません。また、燃料であるメタノールは、天然ガスのほか、石油精製にともなって出てくるガス(石油随伴ガス:従来は燃焼処理によって廃棄)からもつくることができるため、資源の有効利用にもつながります」(担当者)。
メタノールは液体なので、専用の燃料カートリッジによって手軽かつ安全に持ち運ぶことができます。また高濃度メタノールの使用を可能にすることで燃料電池自体の小型化・高出力化も可能になりました。これまでもCEATECなど数々の展示会で実際に燃料電池で駆動する試作機を展示し、大きな反響を巻き起こしています。
「地球温暖化防止」領域 〜 新エネルギー開発、製造プロセス見直し、物流効率化などでCO2削減
社会のインフラを担うエネルギー供給分野で、東芝は環境への配慮という点で多くの実績を上げています。また、半導体をはじめとする先進的な製品づくりの現場や、東芝グループの物流ネットワークにおいても、環境負荷の削減に取り組み成果を上げています。ここ数年は、そうした活動の中でも特に「地球温暖化防止」に注力した取り組みを展開。今回の環境展では、そうした実例が数多く紹介されています。
原子力を熱源とした水素製造
化石燃料の使用によって引き起こされる環境負荷、そして化石燃料そのものが有限であるという事実。それらへの抜本的な対策として、水素社会への移行が期待されています。東芝では、その実現に備え、二酸化炭素を排出しない原子炉の熱を利用した水素製造法として3種類の方法を開発しています。
「1つ目の熱化学法は、高温になった硫酸とヨウ化水素の化学反応を利用して水を分解し水素を発生させる技術。東芝は、450℃の沸騰硫酸に耐えられるシリコンカーバイド製の熱交換器を世界で初めて試作しています。2つ目は高温水蒸気電解法で、600〜900℃の高温の水蒸気を電気分解することによって少ない電力で水素を取りだすことが可能になる技術。東芝は、試作した円筒セルを用いて、世界最高レベルの毎時100リットルの水素製造を達成しました。3つ目のジメチルエーテル改質法は、天然ガス等からつくられたジメチルエーテルを熱によって分解し水素を取りだすという技術。東芝では、現在主流の軽水炉での適用に向け、280℃で作動可能な高活性触媒の開発に成功しています」(担当者)。
このように原子力の熱を利用した水素製造技術に関して、東芝は最先端で取り組んでいます。
化学再生ガスタービン・コージェネシステム
水素社会の実現に向けた1ステップとして、現在稼働中の発電システムで利用できる水素技術があります。それは「化学再生ガスタービン・コージェネシステム」です。
工場や病院、ビルの地下などで自家発電用として利用されているガスタービン発電機は、電気だけでなく大量の熱も供給できます。この熱の一部を利用して燃料のジメチルエーテルや天然ガスを水素リッチな燃料に転換し、これをガスタービンで燃やすと、より高い発電効率を実現することができます。
「実験では発電効率が10%以上向上しています。この技術を使えば、より少ない燃料で同じ出力を得られるので、CO2排出量の削減にも貢献できます。また、電気と熱の出力比を大きく変えられるため、需要の変化に合わせて電気と熱を供給できます。更に、排ガスのNOx濃度を10ppm以下にできるので都市部に設置する場合でも脱硝装置が不要になります。」(担当者)。
東芝では、経済産業省 ?資源エネルギー庁の補助金事業の一環として、関西電力(株)様と共同で実証実験を進め、その効果を確かめることができました。
家庭用燃料電池
都市ガスやLPガスから電気と熱をつくることができる家庭用燃料電池も、東芝は積極的に展開しています。2005年度から(財)新エネルギー財団による大規模実証事業にも参画し、都市ガスやLPガス、灯油などのエネルギー供給企業10社と協力して、この2年間で341台を日本全国に設置しフィールド試験を実施しています。「東芝の家庭用燃料電池は、電気をつくる発電効率が35%、お湯を沸かしたりする排熱回収効率が45%で、総合的なエネルギー効率は80%を越えています。その結果、これまでのように電気やガスを使う生活に比べて、CO2排出量を約40%近く削減することができます」(担当者)。会場には、集合住宅への導入に適した、水素を燃料とする燃料電池の試作機も展示されていました。これは来年度よりフィールド試験を開始する予定です。
東芝セミコンダクター社のCO2削減活動
デジタルカメラやオーディオプレーヤーをはじめさまざまな機器に組み込まれているNANDフラッシュメモリなどの半導体を製造する東芝セミコンダクター社。そのCO2排出量は東芝グループ全体の約50%を占めています。「地球温暖化防止」という目標に向けて、セミコン社のCO2削減の取り組みがもっとも大きな影響力を持つことは明らかです。「そこで2004年に立ち上げたのが、供給用力の効率化(施設、空調の改善。用力とは製造段階で必要な電気やガスなど)や製造プロセスを見直し環境負荷の削減を図るクリーンルーム・エコノロジー・プロジェクトです。たとえば製造工程で使用する特殊ガスを温暖化係数の低いものに変えたり、製造装置の待機時に電力をセーブする仕組みを開発したりしています。セミコン社は今後も次々にクリーンルームをつくっていく予定ですが、そうした新しいノウハウを投入することにより、CO2削減目標をクリアしていこうと考えています」(担当者)。
東芝グループの物流効率化によるCO2削減
グローバルに事業を展開する製造業にとって、物流ネットワークの効率化は常に重要な課題です。東芝グループではグローバル物流の効率化活動を2004年度から実施しています。「お客さまに最適な物流の提案をさせていただくと同時に、物流コストの削減に取り組んでいます。国内に限って言えば、去年だけで約36億円の削減を実現しました。その結果、製品物流にともなうCO2排出量を7,357トン削減することができました。」(担当者)。
さまざまな施策の中から具体的な事例を2つほどご紹介しましょう。
1)お客さまへのコピー機搬入に際して、配送トラックの空き状況に合わせてお客さまに希望日時を予約していただくシステムを構築。これによって配送トラックの運用が最適化し、トラックの削減、燃料費の削減などによりCO2の大幅な削減が実現しました。現在は東京・神奈川エリアで実施していますが、埼玉・千葉エリアへも順次拡大する予定です。
2)これは九州地方の特定のお客さまに関する事例ですが、中国上海から製品を配送する場合、従来は成田の物流拠点経由で行っていたものを、上海から福岡までの船便に切り換えることにより、国内での配送距離を劇的に短縮。それと合わせてコンテナの積載率も45%向上し、結果的に大幅な物流コスト削減、CO2排出量削減に結びつきました。
「資源有効活用」領域 〜 廃棄物のグローバル適正処理や半導体製造プロセスの革新で成果あり
有限資源の有効活用の推進も、持続可能な社会を実現する上で重要な課題です。東芝グループでは、さまざまな製品分野で3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みを行っており、有害廃棄物の適正処理に関するグローバルな施策、生産プロセスの改善、産官学共同研究などを実施しています。
廃棄物のグローバル適正処理支援活動
日本はかつて有害廃棄物などによる公害問題で苦しみました。それを教訓として、現在は、法的な規制はもとより廃棄物処理に関するインフラも整備されています。しかし、海外に目を向けると、そうした環境インフラの不十分な地域がまだまだ存在しています。
東芝グループ企業のテルムでは、アジア地域で活動する現地法人向けに、地域の環境保全の取り組みの一環として、現地で適正処理することが困難な有害廃物を日本国内の先端的なリサイクル企業で処理する活動を行っています。「国境を越えて有害物質を搬送する場合、バーゼル条約を遵守して行う必要がありますし、また、輸送や処理にかかるコストなどクリアしなければならない問題もあります」(担当者)というように現地企業にとってはハードルの高い側面もありますが、少しずつ具体的な成果が上がってきています。
1)東芝情報機器フィリピン社からパソコン用廃電子部品(実装基板)を輸入し、鉛および貴金属を回収。
2)フィリピンの日系企業10数社から廃蛍光灯を輸入し、水銀およびガラスを回収。
「こうした取り組みを通して、廃棄物のグローバル適正処理のネットワークを徐々に広げていこうと考えています」(担当者)。
薬液を大幅に削減できるレジスト除去技術
半導体の製造工程では、精密な部品をつくるためにさまざまな薬品が使われています。不要となったレジストを除去するためのSPM(濃硫酸/過酸化水素水の混合溶液)処理も、その1つ。しかし大量のSPMの使用には、環境負荷の増大、薬品コストおよび排液処理コストの上昇という課題がありました。そこで東芝は発想を変え、この課題を解決する方法として、過酸化水素水をまったく使わず、濃硫酸を繰り返しリサイクルできる新しい処理プロセスを開発したのです。
「濃硫酸を電気分解することにより酸化性の化学種を生成し、SPM処理同様に有機物の分解や金属不純物の酸化溶解を可能にしています。過酸化水素水を含んでいないため硫酸の完全リサイクルも容易ですから、資源の有効利用という点で大きな進歩といえます」(担当者)。NANDフラッシュメモリの製造を担う東芝四日市工場から、この新しい処理プロセスの適用範囲を順次拡大させていく予定です。
